皆さん、一次相続及び二次相続について、ご存知ですか?
一次相続及び二次相続とは、例えば両親と子という家族を考えた場合、最初に父親が亡くなって、母親と子が遺産を相続したとします。これを一次相続と呼びます。次に母親が亡くなり、子がその遺産を相続します。これが二次相続です。
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つまり、一次相続を経た二次相続では、親世代の財産が全て子の世代に引き継がれることになります。そして、一次相続の際に相続税額が最少になる遺産分割を行なったとしても、二次相続も合わせて考えた場合には、かえって相続税の合計額(負担額)が大きくなってしまうということがあるのです。
なぜそんなことが起こるのか、一次相続では一見得をしても、二次相続を含めて考えると損をしてしまう。一次相続と二次相続の相続税額の合計が最も安くなるように対策したベストミックスプランとは何なのか、以下で詳しく解説していきます。
一次相続だけではなく、二次相続までも含めた相続税対策を立てるうえ大変有益ですので、是非ともお役立てください。
一次相続と二次相続の相続税額の合計が最も安くなるように対策したベストミックスプランとは
一次相続と二次相続の相続税額の合計が最も安くなるように対策したベストミックスプランとは、相続税額の合計を最も安くするように、一次相続と二次相続の相続割合を変化させたシミュレーションを行うことで得られます。
具体的に説明すると、一次相続と二次相続とでは、相続税額の計算方法も異なります。
一次相続では、配偶者と子という具合に、相続人が多いために、相続税の基礎控除額が大きく、相続人1人当たりの相続財産も小さくなるために、累進課税に従って、相続税額も比較的低くなっています。
一方、二次相続では、相続人であった配偶者が一人減ったために、相続税の基礎控除額が少なくなると共に、残った、相続人1人当たりの相続財産額も大きくなるために、累進課税に従って、相続税額も高くなるという結果をもたらします。
従って、一次相続と二次相続の相続税額の合計が最も安くなるように対策したベストミックスプランである、一次相続と二次相続の相続割合を変化させたシミュレーションを行うことにより、相続税額の合計を最も安くすることができます。
法定相続分に応ずる取得金額、税率、控除額の表
先ず、「相続税額」を計算する際に必須である「法定相続分に応ずる取得金額」、「税率」、「控除額」の関係を示した表は次の通りです。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
1億円の財産を1人の子が、相続する場合の相続税の金額の計算方法
例えば、1億円の財産を1人の子が、相続する場合の相続税の金額は、上記表を用いて、次のように計算されます。
Step1:基礎控除額の計算式
(基礎控除額)=3000万円+600万円✕相続人の数=3000万円+600万円=3600万円
Step2:法定相続分に応ずる取得金額の計算式
(法定相続分に応ずる取得金額)=1億円 ― 3600万円=6400万円
Step3:上記表より、税率、控除額の取得
6400万円は、1億円以下なので、上記表により、税率=30%、控除額=700万円 となります。
Step4:相続税額の計算式
相続税額 = 6400万円 ✕ 0.3 - 700万円 = 1220万円 となり、
1億円の財産を1人の子が、相続する場合の相続税の金額は、1220万円 となります。
一次相続及び二次相続を経た相続税の総額の3つの具体例
ここで、一次相続と二次相続の相続税額の合計が最も安くなるように対策したベストミックスプランとして、一次相続と二次相続の相続割合を変化させたシミュレーションとして、
(i)一次相続において、法定相続分どおりに分割した場合
(ii)一次相続において、法定相続人で均等に分割した場合
(iii)一次相続において、妻が「配偶者の税額軽減」を限度まで利用して分割する場合
上記3つの場合のうち、相続税額の合計が最も安い場合は、いずれの場合かについて説明します。
特に、この3つの具体例では、一次相続及び二次相続とは、両親と子2人という家族を考えた場合、最初に相続財産が「2億円」の父親が亡くなって、母親と子2人が遺産を相続したとします。これを一次相続と呼びます。次に母親が亡くなり、子2人がその遺産を相続します。これが二次相続です。
(i)一次相続及び二次相続の具体例(法定相続分どおりに分割した場合)
先ず、最初に、法定相続分どおりに分割した場合の一次相続と二次相続の相続税額の合計を、表にて示します。
妻 | 子1 | 子2 | 合計 | |
一次相続 | 基礎控除額 | 4800万円 | ||
取得する財産の額 | 7600万円 | 3800万円 | 3800万円 | 1億5200万円 |
相続税額 | 1580万円 | 560万円 | 560万円 | 2700万円 |
配偶者に対する税額軽減 | ―1580万円 | 0円 | 0円 | ―1580万円 |
差引納税額 | 0円 | 560万円 | 560万円 | 1120万円 |
二次相続 | 基礎控除額 | 4200万円 | ||
取得する財産の額 | – | 1700万円 | 1700万円 | 3400万円 |
相続税額 | – | 205万円 | 205万円 | 410万円 |
一次相続と二次相続の相続額の合計額 | 1530万円 |
次に、この表を説明します。
(i-1)一次相続の具体例(法定相続分どおりに分割した場合)
ここで、父親が亡くなった一次相続では、相続財産が「2億円」の場合、基礎控除額は、「3000万円+600万円✕法定相続人数」ですので、「3000万円+600万円✕3人=4800万円」となります。
よって、「2億円―4800万円=1億5200万円」を法定相続人の3人がその法定相続割合に応じて、財産を取得することとします。
母親の法定相続金額は、「1/2」即ち「7600万円」です。
他方で、子2人の法定相続金額は、夫々「1/4」ずつ即ち「3800万円」ずつとなります。
母親の法定相続金額「7600万円」の税率は「30%」で控除額は「700万円」ですので、相続税額は「1580万円」となります。尚、母親には、「配偶者に対する税額軽減」が適用され、相続税額は「1580万円」から「0円」となります。
他方で、子2人の法定相続金額「3800万円」ずつの税率は「20%」で控除額は「200万円」ですので、相続税額は「560万円」ずつとなり、相続税額の合計は「1120万円」となります。
ここまでが、一次相続です。
(i-2)二次相続の具体例(法定相続分どおりに分割した場合)
次に、母親が亡くなり、子2人が母親の遺産を相続する二次相続が行われたとします。母親が亡くなった二次相続では、相続財産は「7600万円」となりますので、基礎控除額は、「3000万円+600万円✕法定相続人数」ですので、「3000万円+600万円✕2人=4200万円」となります。よって、「7600万円ー4200万円=3400万円」を法定相続人がその法定相続割合に応じて、財産を取得することとします。子2人の法定相続金額は、「1/2」ずつ、即ち「1700万円」ずつです。
子1人の法定相続金額「1700万円」の税率は「15%」で控除額は「50万円」ですので、相続税額は「205万円」となり、二人分ですので相続税額の合計は「410万円」となります。
ここまでが、二次相続です。
(i-3)一次相続の相続税額、及び二次相続の相続税額の合計(法定相続分どおりに分割した場合)
以上より、一次相続の相続税額と、二次相続の相続税額との合計は、「560万円+560万円+205万円+205万円=1530万円」(後述される2つの例と比較して、最安値)となります。
(ii)一次相続及び二次相続の具体例(法定相続人で均等に分割した場合)
先ず、最初に、法定相続人で均等に分割した場合の一次相続と二次相続の相続税額の合計を、表にて示します。
妻 | 子1 | 子2 | 合計 | |
一次相続 | 基礎控除額 | 4800万円 | ||
取得する財産の額 | 5067万円 | 5067万円 | 5067万円 | 1億5200万円 |
相続税額 | 820.1万円 | 820.1万円 | 820.1万円 | 2460.3万円 |
配偶者に対する税額軽減 | ―820.1万円 | 0円 | 0円 | ―820.1万円 |
差引納税額 | 0円 | 820.1万円 | 820.1万円 | 1640.2万円 |
二次相続 | 基礎控除額 | 4200万円 | ||
取得する財産の額 | – | 433.5万円 | 433.5万円 | 867万円 |
相続税額 | – | 43.4万円 | 43.4万円 | 86.8万円 |
一次相続と二次相続の相続額の合計額 | 1727万円 |
次に、この表を説明します。
(ii-1)一次相続の具体例(法定相続人で均等に分割した場合)
ここで、父親が亡くなった一次相続では、相続財産が「2億円」の場合、基礎控除額は、「3000万円+600万円✕法定相続人数」ですので、「3000万円+600万円✕3人=4800万円」となります。よって、「2億円ー4800万円=1億5200万円」を法定相続人が均等に、財産を取得することとします。母親の法定相続金額は、「1/3」即ち「5067万円」です。概ね同様にして、子2人の法定相続金額は、夫々「1/3」ずつ即ち「5067万円」ずつとなります。
母親、及び子2人の法定相続金額「5067万円」の税率は「30%」で控除額は「700万円」ですので、相続税額は「820.1万円」となります。尚、母親には、「配偶者に対する税額軽減」が適用され、相続税額は「820.1万円」から「0円」となります。
よって、子2人の相続税額は「820.1万円」ずつとなり、相続税額の合計は「1640.2万円」となります。
ここまでが、一次相続です。
(ii-2)二次相続の具体例(法定相続人で均等に分割した場合)
次に、母親が亡くなり、子2人が母親の遺産を相続する二次相続が行われたとします。母親が亡くなった二次相続では、相続財産は「5067万円」となりますので、基礎控除額は、「3000万円+600万円✕法定相続人数」ですので、「3000万円+600万円✕2人=4200万円」となります。よって、「5067万円ー4200万円=867万円」を法定相続人がその法定相続割合(即ち「1/2」)に応じて、財産を取得することとします。子2人の法定相続金額は、「1/2」ずつ、即ち「433.5万円」ずつです。
子1人の法定相続金額「433.5万円」の税率は「10%」で控除額は「0円」ですので、相続税額は「43.4万円」となり、二人分ですので相続税額の合計は「86.8万円」となります。
ここまでが、二次相続です。
(ii-3)一次相続の相続税額及び二次相続の相続税額の合計(法定相続人で均等に分割した場合)
以上より、一次相続の相続税額と、二次相続の相続税額との合計は、「820.1万円+820.1万円+43.4万円+43.4万円=1727万円」(最安値との差額は+197万円)となります。
(iii)一次相続及び二次相続の具体例(妻が「配偶者の税額軽減」を限度まで利用して分割する場合)
先ず、最初に、妻が「配偶者の税額軽減」を限度まで利用して分割する場合の一次相続と二次相続の相続税額の合計を、表にて示します。
妻 | 子1 | 子2 | 合計 | |
一次相続(基礎控除額) | 3840万円 | 480万円 | 480万円 | 4800万円 |
取得する財産の額 | 1億2160万円 | 1520万円 | 1520万円 | 1億5200万円 |
相続税額 | 3164万円 | 178万円 | 178万円 | 3520万円 |
配偶者に対する税額軽減 | ―3164万円 | 0円 | 0円 | ―3164万円 |
差引納税額 | 0円 | 178万円 | 178万円 | 356万円 |
二次相続(基礎控除額) | – | 2100万円 | 2100万円 | 4200万円 |
取得する財産の額 | – | 5900万円 | 5900万円 | 1億1800万円 |
相続税額 | – | 1070万円 | 1070万円 | 2140万円 |
一次相続と二次相続の相続額の合計額 | 2496万円 |
次に、この表を説明します。
(iii-1)一次相続の具体例(妻が「配偶者の税額軽減」を限度まで利用して分割する場合)
ここで、父親が亡くなった一次相続では、相続財産が「2億円」の場合、基礎控除額は、「3000万円+600万円✕法定相続人数」ですので、「3000万円+600万円✕3人=4800万円」となります。
特に、ここでは、基礎控除前の相続財産である、「母:1億6000万円」「子:2000万円」「子:2000万円」の割合に応じて、基礎控除を夫々行うこととするので、基礎控除額は、「母:3840万円=4800万円✕1億6000万円÷2億」「子:480万円=4800万円✕2000万円÷2億」同じく「子:480万円=4800万円✕2000万円÷2億」となります。
特に、相続税法は、配偶者に対して優遇措置を設けており、配偶者の相続分が法定相続割合(または1億6千万円のいずれか大きい額)以下の場合には、配偶者には相続税はかからないことになっています。しかしながら、後述される二次相続では配偶者も既に亡くなっているため、この「配偶者の税額軽減」が適用できません。
よって、母親の法定相続金額は、「1億2160万円=1億6000万円―3840万円」です。概ね同様にして、子2人の法定相続金額は、夫々「1520万円=2000万円―480万円」ずつとなります。
母親の法定相続金額「1億2160万円=1億6000万円―3840万円」の税率は「40%」で控除額は「1700万円」ですので、相続税額は「3164万円」となります。尚、母親には、上述したように「配偶者に対する税額軽減」が適用され、相続税額は「3164万円」から「0円」となります。
他方で、子2人の法定相続金額「1520万円=2000万円―480万円」ずつの税率は「15%」で控除額は「50万円」ですので、相続税額は「178万円」ずつの合計「356万円」となります。
ここまでが、一次相続です。
(iii-2)二次相続の具体例(妻が「配偶者の税額軽減」を限度まで利用して分割した場合)
次に、母親が亡くなり、子2人が母親の遺産を相続する二次相続が行われたとします。
母親が亡くなった二次相続では、相続財産は、一次相続の「配偶者に対する税額軽減」が適用され、「1億6000万円」となりますので、基礎控除額は、「3000万円+600万円✕法定相続人数」ですので、「3000万円+600万円✕2人=4200万円」となります。
よって、「1億6000万円ー4200万円=1億1800万円」を法定相続人がその法定相続割合(即ち「1/2」)に応じて、財産を取得することとします。子2人の法定相続金額は、「1/2」ずつ、即ち「5900万円=1億1800万円/2」ずつです。
子1人の法定相続金額「5900万円」の税率は「30%」で控除額は「700万円」ですので、相続税額は「1070万円」となり、二人分ですので相続税額の合計は「2140万円=1070万円+1070万円」となります。
ここまでが、二次相続です。
(iii-3)一次相続の相続税額、及び二次相続の相続税額の合計(妻が「配偶者の税額軽減」を限度まで利用して分割した場合)
以上より、一次相続の相続税額と、二次相続の相続税額との合計は、「178万円+178万円+1070万円+1070万円=2496万円」(最安値との差額は+966万円となり上記の2つと比べた場合の最高値)となります。
「一次相続及び二次相続を経た相続税の総額の3つの具体例」のまとめ
このように、一次相続と二次相続を経た相続税の総額の3つの具体例では、相続財産が「2億円」であり、父母と子2人という被相続人及び相続人が、同じ前提にも関わらず、相続税額の総額に大きな差が生じました。
従って、相続対策を考える際には、一次相続だけでなく二次相続の相続税額も考慮する必要があります。被相続人及び相続人が誰なのかや、相続財産額を正確に把握し、最適な対策を取ることが重要です。
今回は、一次相続と二次相続の相続税額の合計が最も安くなるように対策したベストミックスプランとして、一次相続と二次相続の相続割合を変化させた数値計算において、次の3つの場合での相続税の総額を比較し、
(i)一次相続において、法定相続分どおりに分割した場合
(ii)一次相続において、法定相続人で均等に分割した場合
(iii)一次相続において、妻が「配偶者の税額軽減」を限度まで利用して分割する場合
上記3つの場合のうち、相続税額の合計が最も安い場合は、
(i)一次相続において、法定相続分どおりに分割した場合
でした。
このように、一次相続と二次相続の相続税額の合計が最も安くなるように対策したベストミックスプランについては、具体的には、一次相続と二次相続とでは、配偶者の1人分だけ基礎控除額が二次相続では少なくなると共に、二次相続のほうが各相続人毎の取得金額が高くなるので、累進課税に従い、税額が高くなる傾向があります。しかし、最適な相続割合を、シミュレーション又は複数の場合での数値計算を行うことで、相続税額の合計を軽減することができることを知ることができます。詳細には、一次相続と二次相続を相続配分を最適化することで、相続税額の合計をより安くできることが分かると思います。
さらに、相続税額の合計を軽減するためには、本記事では詳述しませんが、生前贈与や生命保険を活用することが有効です。生前贈与は、相続時に贈与税を軽減するための方法であり、生命保険は納税資金対策として利用することができます。
相続税対策だけでなく、遺産争いを防ぐための対策や配偶者の生活費と住居についての配慮も考慮すべきポイントです。
尚、本記事の内容は、あくまでも一具体例ですので、正確な相続税の税額については、身近なお付き合いのある税理士の先生にお聞き下さりますようお願い申し上げます。
最後までお読みいただきありがとうございました^^♪