皆さん
相続の時のマメ知識として、『小規模宅地等の特例』ってご存知ですか?
『小規模宅地等の特例』を、知っているかどうかで、相続税が、何百万円から何千万円も変わるんですよ!
この記事では、『小規模宅地等の特例』の概要と、具体例について説明しました!
相続税が何倍も変わってしまうことを未然に防ぎたい人は、是非とも読み進めて頂けますと幸いです♪
- 小規模宅地等の特例の概要について
- 小規模宅地等の特例を用いた節税の具体例(その1:自宅(特定居住用宅地)を相続する場合)
- 小規模宅地等の特例のメリットとデメリット(その1:自宅(特定居住用宅地)を相続する場合)
- 小規模宅地等の特例を用いた節税の具体例(その2:特定事業用宅地を相続する場合)
- 小規模宅地等の特例のメリットとデメリット(その2:特定事業用宅地を相続する場合)
- 小規模宅地等の特例を用いた節税の具体例(その3:特定同族会社事業用宅地を相続する場合)
- 小規模宅地等の特例のメリットとデメリット(その3:特定同族会社事業用宅地を相続する場合)
- 小規模宅地等の特例を用いた節税の具体例(その4:貸付事業用宅地を相続する場合)
- 小規模宅地等の特例のメリットとデメリット(その4:貸付事業用宅地を相続する場合)
- 小規模宅地等の特例のまとめ
- 「小規模宅地等の特例」と、他の制度との関係について
小規模宅地等の特例の概要について
小規模宅地等の特例とは、相続税の計算において、亡くなった人(被相続人)が生前に居住や事業に使用していた宅地(自宅や事業用地など)の評価額を最大80%まで下げることができる税制上の優遇措置です。
この小規模宅地等の特例の適用により、相続税の負担が大きく軽減され、残された家族が、大切な財産を売却せざるを得なくなる事態を防ぎ、生活の基盤を維持しやすくなることが目的です。
特に、地価の高い都心部等においては、この小規模宅地等の特例が使えるか否かによって、相続税が、何百万円から何千万円だけ変わることもあります。
更に、遺産の合計額が、基礎控除を超えていたとしても、この小規模宅地等の特例を使うことで、基礎控除以下となり、結果として、相続税が0円になる人も沢山います(但し、相続税の申告は必要です)。
◆「特定居住用宅地」等
◆「特定事業用宅地」等
◆「特定同族会社事業用宅地」等
◆「貸付事業用宅地」等
の4つのカテゴリーに大別されます。
各カテゴリーにはそれぞれ適用できる限度面積と減額割合が定められています。
要件を満たすためには、宅地が特定の用途に供されていたこと、相続税の申告期限まで一定の条件を満たし続けることなど、細かなルールが存在します。
適用要件を満たすためには、被相続人の配偶者、同居親族、または特定条件を満たす非同居親族である必要があります。
この制度の鍵となるのは、被相続人の生活基盤となっていた宅地の重要性を認め、相続人がその宅地に引き続き居住する機会を保護することにあります。
但し、小規模宅地等の特例の制度の利用には相続税の申告が必要であり、
相続税の申告に際しては特例の適用を受ける宅地の種類に応じて添付すべき書類が異なります。
相続税の申告期限(※1)の前に宅地を売却すると、原則、小規模宅地等の特例の適用を受けることができない点にも注意が必要です。(例外として、配偶者の場合、売却できます。詳細は後述されます。)
この小規模宅地等の特例の制度を利用することで、相続税の負担を大幅に軽減し、相続人が生活の基盤を維持しやすくなるため、相続対策の一環として非常に重要な位置を占めています。
加えて、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や、相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等についても、この小規模宅地等の特例の適用は受けることが出来ません。
被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10カ月以内に行うことになっています。
例えば、1月6日に死亡した場合にはその年の11月6日が申告期限になります。
尚、この期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たる時は、これらの日の翌日が期限とみなされます。
小規模宅地等の特例を用いた節税の具体例(その1:自宅(特定居住用宅地)を相続する場合)
特定居住用宅地とは、故人が亡くなる直前に居住の用に供されていた宅地、つまり故人の自宅があった土地を指します。
この宅地を相続または遺贈により取得した親族が、一定の要件を満たす場合に、その土地の評価額の80%までを減額することができます。
適用される限度面積は330㎡までです。
①被相続人の自宅として使用されていた宅地であること。
②相続または遺贈によって親族が取得すること。
③特定の要件に該当する親族が取得者であること(配偶者、同居親族、または「家なき子特例(後述されます)」)。
具体例として、被相続人が自宅として使用していた宅地(面積400㎡、評価額8000万円)を子どもが相続した場合を想定しましょう。
この自宅宅地が「特定居住用宅地」等に該当し、相続人が配偶者や被相続人と生計を一にしていた親族である場合、小規模宅地等の特例を適用して評価額を最大80%まで減額できます。
この特定居住用宅地の場合、330㎡までの部分については80%の減額が可能です。これにより、330㎡分の評価額(約6600万円)が80%減額され、1320万円となります。
残りの70㎡分については通常の評価額が適用されますが、全体として相続税の評価額を大きく下げることが可能になり、相続税負担を軽減できます。
(i)「小規模宅地等の特例が適用された特定居住用宅地」の評価額
より詳細には、
「小規模宅地等の特例が適用された特定居住用宅地(330㎡)」の評価額は次のようになります。
8000万円×(330㎡÷400㎡)×(100%-80%)=1320万円
(ii)「小規模宅地等の特例が適用されない通常の宅地」の評価額
「小規模宅地等の特例が適用されない通常の宅地(400㎡-330㎡=70㎡)」の評価額は次のようになります。
8000万円×(70㎡÷400㎡)=1400万円
(iii)「小規模宅地等の特例が適用された特定居住用宅地」と通常の宅地の評価額の合計
「小規模宅地等の特例が適用された特定居住用宅地」と
「小規模宅地等の特例が適用されない通常の宅地」の評価額の合計は、
次のようになります。
1320万円+1400万円=2720万円
(iv)小規模宅地等の特例が適用されたらいくら相続税を節税できる?
小規模宅地等の特例を適用する前の宅地の評価額は、
【8000万円】であるのに対して、
小規模宅地等の特例を適用した後の宅地の評価額は、
【2720万円】となり、
その差額は【5280万円】です。
この差額【5280万円】は、1億円以下の税率30%と控除額700万円を考慮すると、相続税額【884万円】も節税可能です。
小規模宅地等の特例を知っているか否かで、
【884万円】も節税出来るなんて、本当に凄い特例ですね!!
小規模宅地等の特例のメリットとデメリット(その1:自宅(特定居住用宅地)を相続する場合)
自宅(特定居住用宅地)を相続する場合に小規模宅地等の特例を利用する際のアドバイスとして、そのメリットとデメリットを説明します。
小規模宅地等の特例(その1:自宅(特定居住用宅地)を相続する場合)のメリット
①相続税負担の大幅な軽減
小規模宅地等の特例を適用することで、自宅の宅地の相続税評価額を最大80%まで減額することができます。
これにより、相続税の負担が、前述の場合、【884万円】も大幅に軽減され、経済的な負担が減少し、相続人は故人の自宅を手放さずに済む可能性が高まります。
②家族の生活基盤の維持
故人の自宅を引き続き使用することが可能となるため、家族の生活基盤を維持しやすくなります。
特に同居していた家族にとっては、生活環境を大きく変えることなく安定して生活を続けることができます。
③手続きの明確性
小規模宅地等の特例の適用要件は比較的明確であり、相続のプロセスにおいて適用可能かどうかを判断しやすいです。
これにより、相続計画を立てやすくなります。
④遺産総額そのものの割り引き
小規模宅地等の特例を使える人が、自宅を相続すると、遺産総額そのものが割り引かれて計算されるため、その結果、自宅を相続しない他の相続人の相続税も減少することになります。
小規模宅地等の特例(その1:自宅(特定居住用宅地)を相続する場合)のデメリット
①相続税の申告が必要
この小規模宅地等の特例を受けるためには、相続税の申告が必須です。相続税の申告には、適用要件を満たしていることを証明するための複数の書類が必要となり、手続きが煩雑になる場合があります。
これにより、相続税の申告の際には専門家のアドバイスが必要となる場合があります。
②適用範囲の制限
限度面積(330㎡)を超える部分については、小規模宅地等の特例の適用が受けられないため、大きな土地を相続する場合は全てが軽減の対象とはなりませんので、注意が必要です。
③小規模宅地等の特例を適用した宅地等の売却時の制限
小規模宅地等の特例を適用した宅地等は、原則、相続税の申告期限まで保有していなければならないため(所謂、「保有継続要件(※2)」)、この期間内に売却することができません。
この制限により、資金調達や資産の再配置に柔軟に対応できない場合があります。
④「保有継続要件(※2)」とは?
「保有継続要件」とは、その宅地等を相続税の申告期限まで有していることです。
但し、被相続人の配偶者のみが小規模宅地等の特例の適用を受ける場合、この「保有継続要件」は無く、相続税の申告期限までに売却して大丈夫です。
他方で、相続人が同居親族の場合は、この「保有継続要件」に加えて、「相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住している必要」があります。
実務では、被相続人である親との同居期間は、ほんの少しでも問題ありません。極端な話、亡くなる1週間前から同居を始めたとしてもこの特例を使えます。
しかし、上述したように、同居親族は、「相続税の申告期限まで引き続きその建物に継続して住み続けることが条件」となります。
更に詳細には、被相続人である親と住民票だけ一緒であるだけでは、小規模宅地等の特例の適用を受けることは出来ません。
同居していたという実態が必要なのです。
⑤小規模宅地等の特例の適用の複雑さ
特定居住用宅地等に限らず、小規模宅地等の特例の適用要件は複数あり、全ての要件を満たす必要があるため、一部の相続人にとっては適用が難しい場合があります。
特に、同居親族以外の親族が適用を受ける場合(所謂、「家なき子特例(※3)」の場合など)は、さらに厳格な要件を満たす必要があります。
⑥「家なき子特例(※3)」とは
「家なき子特例」とは、
もしも被相続人の配偶者も、被相続人と同居している相続人もいない場合には特別に、「3年以上借家暮らしをしていた親族」が相続する場合も、上述した小規模宅地等の特例が適用され、宅地の評価額の80%の減額が可能です。
但し、この「家なき子特例」は、第三者が家主である、純粋な借家暮らしをしている親族にだけ適用可能です。
ですので、例えば、自分の義理の父が所有する家屋を借家している場合や、自身で経営している法人の社宅に住んでいる場合は適用出来ません。
加えて、この「家なき子特例」は、この親族が「相続開始後、その相続した家に引っ越さなければいけない」という条件はありませんが、相続税の申告期限までは宅地を売却してはいけないという条件、所謂、「保有継続要件(※2)」はあります。
⑦総括
これらのメリットとデメリットを踏まえ、小規模宅地等の特例の適用を検討する際には、専門家と相談しながら慎重に判断することが重要です。
小規模宅地等の特例を用いた節税の具体例(その2:特定事業用宅地を相続する場合)
特定事業用宅地とは、故人が亡くなる直前に事業の用に供されていた宅地、つまり故人の個人事業で使用されていた土地を指します。
この特定事業用宅地を相続または遺贈により取得した親族が、一定の要件を満たす場合に、その土地の評価額の最大80%までを減額することができます。適用される限度面積は400㎡までです。
①故人の事業の用に供されていた宅地であること。
②相続または遺贈によって親族が取得すること。
③相続税の申告期限までに事業を引き継ぎ、事業を営んでいること(「事業承継要件」)。
④相続税の申告期限まで宅地を保有していること(「保有継続要件」)。
具体例として、被相続人が個人事業主として利用していた事業用宅地(面積500㎡、評価額1億円)を子どもが相続した場合を想定します。
この宅地が特定事業用宅地等に該当し、相続人が被相続人の事業を継続する意向がある場合、小規模宅地等の特例を適用して評価額を最大80%まで減額できます。
この事業用宅地の場合、特定事業用宅地等として400㎡までの部分については80%の減額が可能です。
これにより、400㎡分の評価額(約8000万円)が80%減額され、1600万円となります。
残りの100㎡分については通常の評価額が適用されますが、全体として相続税の評価額を大きく下げることが可能になり、事業の継続や発展に資金を投じやすくなります。
(i)「小規模宅地等の特例が適用された特定事業用宅地」の評価額
より詳細には、
「小規模宅地等の特例が適用された特定事業用宅地(400㎡)」の評価額は次のようになります。
1億円×(400㎡÷500㎡)×(100%-80%)=1600万円
(ii)「小規模宅地等の特例が適用されない通常の宅地」の評価額
「小規模宅地等の特例が適用されない通常の宅地(500㎡-400㎡=100㎡)」の評価額は次のようになります。
1億円×(100㎡÷500㎡)=2000万円
(iii)「小規模宅地等の特例が適用された特定事業用宅地」と「通常の宅地」の評価額の合計
「小規模宅地等の特例が適用された特定事業用宅地」と
「小規模宅地等の特例が適用されない通常の宅地」の評価額の合計は、
次のようになります。
1600万円+2000万円=3600万円
(iv)小規模宅地等の特例が適用されたらいくら相続税を節税できる?
小規模宅地等の特例を適用する前の特定事業用宅地の評価額は、
【1億円】であるのに対して、
小規模宅地等の特例を適用した後の宅地の評価額は、
【3600万円】となり、
その差額は【6400万円】です。
この差額【6400万円】は、1億円以下の税率30%と控除額700万円を考慮すると、相続税額【1220万円】も節税可能です。
小規模宅地等の特例を知っているか否かで、
【1220万円】も節税出来るなんて、本当に凄い特例ですね!
特に、特定事業用宅地の限度面積は400㎡で、自宅の限度面積は330㎡と比較して、70㎡も大きいので、節税効果は大きいですね!
被相続人の宅地が、自宅、兼、事業用宅地の場合です。
この場合、事業用宅地(特定事業用宅地)等に対する小規模宅地等の特例と、自宅(特定居住用宅地)等に対する小規模宅地等の特例との併用が可能です。但し、貸付事業用宅地等がない場合に限定されます。
この併用の場合、限度面積が730㎡(=400㎡+330㎡)となります。
自宅、兼、事業用宅地の場合は、節税効果は、更に大きくなりますね!
小規模宅地等の特例のメリットとデメリット(その2:特定事業用宅地を相続する場合)
特定事業用宅地を相続する場合に、小規模宅地等の特例を利用する際のアドバイスとして、そのメリットとデメリットを説明します。
小規模宅地等の特例(その2:特定事業用宅地を相続する場合)のメリット
①事業継続のサポート
特定事業用宅地等の特例を適用することで、宅地の評価額を最大80%まで減額できるため、相続による事業資産の評価額を大幅に減少し、相続税の負担が軽減されます。
これにより、相続人が事業を継続しやすくなり、事業の安定と成長をサポートします。
②資金流動性の向上
相続税の軽減により、事業用資産を売却する必要性が減少します。その結果、事業運営に必要な現金を確保しやすくなり、資金流動性が向上します。
③相続税負担の大幅な軽減
特定事業用宅地の相続税評価額の大幅な減額により、相続人の経済的負担が軽減されます。これにより、事業投資や拡大などの機会に資金を投じやすくなります。
④地域経済や雇用の安定
故人が運営していた事業を相続人が継続する際、資金面での負担が軽減されるため、スムーズな事業承継が可能となります。これにより、地域経済や雇用の安定にも寄与することが期待できます。
小規模宅地等の特例(その2:特定事業用宅地を相続する場合)のデメリット
①事業継続の条件
特定事業用宅地等の特例を受けるためには、相続人が被相続人の事業を継続することが条件となります。
事業を継続する意向がない場合や、事業が順調に継続できない状況では特例の適用が難しくなります。
②複雑な要件と手続き
特定事業用宅地を相続する場合の特例適用には、「事業承継要件(※3)」や「保有継続要件」など、満たすべき複数の条件があります。
これらの条件を把握し、必要な書類を準備する手続きは煩雑になりがちです。
③「事業承継要件(※3)」
「事業承継要件」とは、その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限まで引き継ぎ、かつ、その申告期限そのまでに事業を営んでいることを意味します。
これは、一定の事業承継計画を立て、それを実行に移す必要があり、準備に時間と労力がかかる場合があります。
④保有期間の制約、所謂、「保有継続要件」
特例を受けた特定事業用宅地等は、相続税の申告期限まで保有していなければならないため、この期間内に特定事業用宅地を売却したり事業の方向性を大きく変更したりすることができません。
これにより、事業運営の柔軟性に一定の制約が生じる場合があります。
⑤総括
特定事業用宅地の特例は、事業を継続する相続人にとって大きなメリットをもたらしますが、事業承継要件や保有継続要件など、満たすべき条件が厳格です。
これらの要件を満たすためには、事業の将来性、継続の意向、適切な計画と準備が必要となります。特例の適用を検討する場合は、専門家と相談し、適用条件や必要書類、事業承継計画の作成について十分な検討を行うことが重要です。
小規模宅地等の特例を用いた節税の具体例(その3:特定同族会社事業用宅地を相続する場合)
特定同族会社事業用宅地は、故人が亡くなる直前に、故人または故人の親族が50%以上の株式を保有する同族会社の事業の用に供されていた宅地を指します。
この宅地を相続または遺贈により取得した親族が一定の要件を満たす場合に、その土地の評価額の最大80%までを減額することができます。
適用される限度面積は400㎡です。
①・宅地が故人または故人の親族が50%以上の株式を保有する同族会社の事業用に供されていたこと。
②・相続または遺贈によって親族が取得すること。
③・相続税の申告期限においてその法人の役員であること(「法人役員要件」)。
④・相続税の申告期限まで宅地を保有していること(「保有継続要件」)。
ある家族経営の製造業を営む同族会社があります。この会社は、創業者である祖父から父へ、そして現在は孫が経営を引き継いでいます。
会社の敷地内には、工場と事務所が建っており、この土地は特定同族会社事業用宅地として相続の対象になりました。
祖父が亡くなった時、父がその土地を相続しました。
その土地は相続の直前にも会社の事業用として使用されていたため、特定同族会社事業用宅地の要件を満たしています。
土地の面積は500㎡で、市場価値は1億円と評価されました。
相続税の計算に際して、小規模宅地等の特例を適用することで、土地の評価額を限度面積400㎡まで、最大80%減額できる可能性があります。
上述した、「小規模宅地等の特例が適用された特定事業用宅地」と「小規模宅地等の特例が適用されない通常の宅地」の評価額の合計と概ね同様の計算により、3600万円と評価され、市場価値は1億円との差額は、【6400万円】です。
この差額【6400万円】は、1億円以下の税率30%と控除額700万円を考慮すると、相続税額【1220万円】も節税可能です。
結果として、家族は事業を継続しながら、相続税の負担を【1220万円】も軽減することができました。
小規模宅地等の特例を、特定同族会社事業用宅地に適用出来ると知っているかことで、
【1220万円】も節税出来るなんて、本当に凄い特例ですね!
小規模宅地等の特例のメリットとデメリット(その3:特定同族会社事業用宅地を相続する場合)
特定同族会社事業用宅地を相続又は遺贈により取得する場合に、小規模宅地等の特例を利用する際のアドバイスとして、そのメリットとデメリットを説明します。
小規模宅地等の特例(その3:特定同族会社事業用宅地を相続する場合)のメリット
①相続税負担の大幅な軽減
特定同族会社事業用宅地等に小規模宅地等の特例を適用することで、宅地の評価額が最大80%まで減額されます。
これにより、相続税の額が大幅に軽減され、資金繰りに関する家族の負担を減らすことができます。
特に、事業の継続や発展を図る同族会社にとっては、資金を有効に活用できる重要な機会となります。
②事業の安定した継続
家族が経営する同族会社の事業用宅地に対する税負担が軽減されるため、事業の安定と継続を図ることができます。
また、事業承継の際の経済的な障壁が低減されることから、円滑な事業承継が促進されます。
更に、小規模宅地等の特例の適用により、事業用地を売却する必要性が低減され、長期的な事業計画や戦略を練りやすくなります。
小規模宅地等の特例(その3:貸付事業用宅地を相続する場合)のデメリット
①適用条件の厳格性
特例を受けるためには、一連の厳格な条件を満たす必要があります。例えば、相続税の申告期限においてその法人の役員である必要がある点や、「保有継続要件」など、これらの条件を満たすことが求められます。
これらの条件を誤って理解したり、適切に準備できなかったりすると、特例の適用を受けられないリスクがあります。
②限度面積の制限
特例の適用を受けることができる宅地の面積には上限(400㎡)が設けられています。
これを超える部分については特例の適用が受けられず、通常の評価額で計算されます。
従って、大規模な事業用宅地を持つ場合、特例の適用範囲が限定される可能性があります。
③総括
特定同族会社事業用宅地等に対する小規模宅地等の特例の適用は、相続税負担の大幅な軽減や事業の安定した継続に寄与します。
しかし、その適用要件の厳格さや計画性の必要性を考慮し、事前の準備と確認が非常に重要になります。
特例の適用を検討する場合は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
小規模宅地等の特例を用いた節税の具体例(その4:貸付事業用宅地を相続する場合)
貸付事業用宅地とは、故人が亡くなる直前に、貸地や貸家などの貸付事業として使用していた宅地を指します。
この宅地を相続または遺贈により取得した親族が一定の要件を満たす場合に、その土地の評価額の最大50%までを減額することができます。
適用される限度面積は200㎡です。
①宅地が故人の貸付事業用として使用されていたこと。
②相続または遺贈によって親族が取得すること。
③相続税の申告期限まで宅地を保有していること(保有継続要件)。
具体的には、被相続人が貸地や貸家として利用していた貸付事業用宅地(面積300㎡、評価額6000万円)を子どもが相続したケースを考えます。
この宅地が貸付事業用宅地等に該当する場合、小規模宅地等の特例を適用して評価額を最大50%まで減額できます。
この事例では、200㎡までの部分に対して50%の減額が可能です。
つまり、200㎡分の評価額(約4000万円)が50%減額され、2000万円になります。
残りの100㎡分は通常の評価額が適用されますが、全体として相続税評価額を下げることができ、相続税負担を軽減できます。
(i)「小規模宅地等の特例が適用された貸付事業用宅地」の評価額
より詳細には、
「小規模宅地等の特例が適用された貸付事業用宅地(300㎡)」の評価額は次のようになります。
6000万円×(200㎡÷300㎡)×(100%-50%)=2000万円
(ii)「小規模宅地等の特例が適用されない通常の宅地」の評価額
「小規模宅地等の特例が適用されない通常の宅地(300㎡-200㎡=100㎡)」の評価額は次のようになります。
6000万円×(100㎡÷300㎡)=2000万円
(iii)「小規模宅地等の特例が適用された貸付事業用宅地」と「通常の宅地」の評価額の合計
「小規模宅地等の特例が適用された貸付事業用宅地」と
「小規模宅地等の特例が適用されない通常の宅地」の評価額の合計は、
次のようになります。
2000万円+2000万円=4000万円
(iv)小規模宅地等の特例が適用されたらいくら相続税を節税できる?
小規模宅地等の特例を適用する前の貸付事業用宅地の評価額は、
【6000万円】であるのに対して、
小規模宅地等の特例を適用した後の貸付事業用宅地の評価額は、
【4000万円】となり、
その差額は【2000万円】です。
この差額【2000万円】は、3000万円以下の税率15%と控除額50万円を考慮すると、相続税額【250万円】も節税可能です。
貸付事業用宅地を所有する被相続人の相続人が、小規模宅地等の特例を知っていることで、
【250万円】も節税出来るなんて、本当に凄い特例ですね!
小規模宅地等の特例のメリットとデメリット(その4:貸付事業用宅地を相続する場合)
貸付事業用宅地を相続又は遺贈により取得する場合に、小規模宅地等の特例を利用する際のアドバイスとして、そのメリットとデメリットを説明します。
小規模宅地等の特例(その4:貸付事業用宅地を相続する場合)のメリット
①相続税負担の軽減
貸付事業用宅地等に対する小規模宅地等の特例を利用することで、相続税の評価額を最大50%まで減額でき、相続人が支払う相続税の負担が大幅に軽減されます。
これにより、例えば、上述した【250万円】の節税が可能です。
これにより、賃貸事業などの貸付事業を継続する上での経済的な負担が軽くなります。
②貸付事業の継続支援
賃貸アパートやオフィスビルなどの貸付事業を行っている場合、この特例の適用により、相続人は貸付事業用宅地を手放すことなく、被相続人が築いてきた事業を継続することが可能になります。
これにより、事業収益の維持・向上に寄与し、長期的な安定経営への道を開くことが可能です。事業資産の維持が事業継続のキーとなるため、この支援は重要です。
③資産管理の柔軟性
相続税負担が軽減されることで、相続人は貸付事業用宅地の売却や再開発など、将来の資産管理においてより多くの選択肢を持つことができます。
小規模宅地等の特例(その4:貸付事業用宅地を相続する場合)のデメリット
①適用条件の複雑さ
貸付事業用宅地等の特例は、適用条件が比較的複雑であり、特定の要件を満たす必要があります。
特例の適用を受けるためには、貸付事業の性質や宅地の利用状況に関する詳細な情報が必要になる場合があります。
②保有継続要件
小規模宅地等の特例を適用するためには、相続税の申告期限まで宅地を保有し続ける必要があります。
この要件により、この期間内に事業の見直しや、柔軟な資産の売却を伴う資産の再配置を行いたい場合、計画を制限される可能性があります。
特例を活用するためには、貸付事業計画を柔軟に変更することが難しくなる場合があります。
③事業の将来性への配慮
貸付事業用宅地を相続する際には、事業の将来性や市場の動向を考慮する必要があります。
特例を適用しても、市場の変化により事業が存続困難になる可能性も考慮する必要があります。
④総括
貸付事業用宅地の特例は、貸付事業を運営する相続人にとって有益な制度ですが、適用条件や限度面積(200㎡)、減額率(50%)の制限などを十分に理解し、上記のメリットとデメリットを総合的に評価し、計画を立てる必要があります。
特例の利用を検討する場合は、事前に専門家に相談し、特例の適用可能性や事業計画に与える影響を確認することが重要です。
小規模宅地等の特例のまとめ
小規模宅地等の特例とは、相続税の計算において、亡くなった人(被相続人)が生前に居住や事業に使用していた宅地(自宅や事業用地など)の評価額を最大80%まで下げることができる税制上の優遇措置です。
この小規模宅地等の特例の適用により、相続税の負担が大きく軽減され、残された家族が、大切な財産を売却せざるを得なくなる事態を防ぎ、生活の基盤を維持しやすくなることが目的です。
特に、地価の高い都心部等においては、この小規模宅地等の特例が使えるか否かによって、相続税が、何百万円から何千万円だけ変わることもあります。
更に、遺産の合計額が、基礎控除を超えていたとしても、この小規模宅地等の特例を使うことで、基礎控除以下となり、結果として、相続税が0円になる人も沢山います(但し、相続税の申告は必要です)。
小規模宅地等の特例の適用を検討する際には、メリットとデメリットを踏まえ、税理士や相続対策の専門家と相談しながら慎重に判断することが重要です。
「小規模宅地等の特例」と、他の制度との関係について
「小規模宅地等の特例」と、次の制度との関係性については、別の記事で説明していくようにしますね。
「贈与」、「生前贈与」、「相続時精算課税制度」、所謂「おしどり贈与」と、「小規模宅地等の特例」との比較について
「配偶者居住権」と「小規模宅地等の特例」との併用について
「空き家特例」と「小規模宅地等の特例」との併用について
ご不明点やご質問等ございましたら迅速に対応致しますので、ご連絡の程、何卒宜しくお願い致します。
宅地建物取引士(登録番号(東京)第277705号)
ICA公認 相続対策コンサルタント
Tsuyoshi NAGAMACHI