現生人類(ホモ・サピエンス/ホモサピエンス)に最も近縁とされる古代型人類ネアンデルタール人は、ヨーロッパでは約40万年前に出現したとされました。約5万4000年前には現生人類と共存していたことが予測されました。そして、約4万年前にネアンデルタール人が絶滅し、現生人類が生き残りました、とする説が有力です。
なぜネアンデルタール人は滅び、ホモ・サピエンスだけが生き残ったのでしょうか?
世界の研究者たちが、この「交代劇」の謎を解き明かそうと試みていますが、真相はまだ明らかになっていません。
今現在、大きく分けて、次の4つの学説があり、それらを踏まえた素人の私の理由(5つ目の説)についても分かりやすく調べて書いてみましたので、興味のある方は読み進めて頂けますと幸いです。
ネアンデルタール人とは?
ネアンデルタール人 =学名はホモ・ネアンデルターレンシスです。
1856年にドイツのネアンデル谷で発見された人骨などにちなんで名付けられました。
眉の部分が隆起し、鼻から口にかけて突き出た顔、がっしりとした筋肉質の体が特徴です。
約30万年前から欧州を中心とするユーラシア大陸で暮らしていました。
アフリカを出たホモ・サピエンスが欧州に進出したのは約4万5000年前と考えられており、両者は少なくとも数千年間は、ほぼ同じ地域にいたと考えられています。
現生人類(ホモ・サピエンス)とは?
現生(現在生きている)人類は、学名が『ホモ・サピエンス(Homo sapiens)』あるいは『ホモ・サピエンス・サピエンス:ホモサピエンスサピエンス(Homo sapiens sapiens)』であり、言い換えると、標準和名『ヒト』(人、英: human)を指した動物を意味します。
標準和名『ヒト』は、ヒト亜族(Hominina)に属する動物の総称です。
『Homo sapiens』は「知恵のある人」という意味です。
『ヒト』とは、いわゆる「人間(にんげん)」の生物学上の標準和名です。
生物学上の種としての存在を指す場合には、カタカナを用いて、こう表記することが多いです。
亜族 | ヒト亜族 | Hominina |
属 | ヒト属 | Homo |
種 | ヒト | Homo sapiens |
古来「人は万物の霊長であり、そのため人は他の動物、さらには他の全ての生物から区別される」という考えは普通に見られますが、生物学的にはそのような判断はないです。
「ヒトの祖先はサルである」と言われることもありますが、生物学的には、『ヒト』は「サル目ヒト科ヒト属」に属する、と考えられており、「サルから別の生物へ進化した」という説を証明する決定的な証拠はまだなく、依然としてサル属の一種と見なされています。
アフリカ類人猿の一種であるとされ、生物学的に見ると、ヒトにもっとも近いのはヒト以外の大型類人猿です。
ヒトとその他の大型類人猿がヒト上科を構成しています。
(1)疫病説:ネアンデルタール人滅亡なぜ?ホモサピエンスが生き残った理由は?
ネアンデルタール人は、なぜ絶滅したのか?の仮説の一つに、アフリカから世界に広がったホモ・サピエンスとの交雑で、ネアンデルタール人の間でアフリカ由来の深刻な感染症(疫病)が広がり、人口を減らしたという「疫病説」があります。
病気(疫病)に関係する遺伝子の研究が注目されるのは、この仮説を検証できる可能性があるからです。高い精度で解読されたネアンデルタール人の「DNA」の数が増えれば、その手がかりをつかめるかもしれないのです。
以下、病気(疫病)に関係する遺伝子の研究についてです。
2020年、「現生人類(ホモ・サピエンス)は、ネアンデルタール人から新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ遺伝子を受け継いでいる」と発表されました、沖縄科学技術大学院大学の研究論文が話題になりました。
発表したのは、沖縄科学技術大学院大学の客員教授を兼ねるドイツのマックス・プランク進化人類学研究所の所長のスバンテ・ペーボ博士です。
ネアンデルタール人のDNAを解読し、現生人類(ホモ・サピエンス)の祖先とネアンデルタール人が交雑していたことを突き止めた研究者です。
ネアンデルタール人由来のコロナ重症化を防ぐ遺伝子は、現生人類(ホモ・サピエンス)の12番目の染色体にあるとされています。
体内でコロナウイルスの遺伝情報の実体であるRNA(Ribo Nucleic Acid)を分解する酵素の働きを強め、重症化のリスクを約20%下げるといいます。
このネアンデルタール人由来のコロナ重症化を防ぐ遺伝子は、日本人の約30%が持つと言われています。
「DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)」と「RNA(Ribo Nucleic Acid)」は共にヌクレオチドの重合体である核酸ですが、両者の生体内の役割は明確に異なっています。
「DNA」の役割は、主に核の中で情報の蓄積・保存をする事です。
一方、「RNA」の役割は、その情報の一時的な処理 を担い、「DNA」と比べて、必要に応じて合成・分解される頻度は顕著です。
(2)「能力の差」説:ネアンデルタール人滅亡なぜ?ホモサピエンスが生き残った理由は?
2000年代初めまで有力だった仮説は、「ホモ・サピエンスは抽象的な思考ができて高度な言葉を操るなど、ネアンデルタール人より優れていた」というものです。
言い換えると、ネアンデルタール人の絶滅の原因は分からない部分が多いですが、ホモ・サピエンスは「群れを作り、高度な言葉を操り情報を共有できた」から生き残れたと言われています。
詳細には、ネアンデルタール人は実は体力的に丈夫で単独でも生きられたため、あまり強い社会性を持たなかったのです。
グループと言ってもせいぜい数家族の集まりで、そこで何かしかの文化や技術があってもほかのグループに伝わることはありませんでした。
これに対して、ホモ・サピエンスは知能では、ネアンデルタール人とほぼ同じ知能でしたが体力がなかったため逆に大きな集団を作る習性を得ました。
これにより、ホモ・サピエンスは、文化や技術を広い範囲に広めることでネアンデルタール人より発達して高い順応性を得ることができました。
その結果、ホモ・サピエンスは、数万という集団の技術がお互いに広がり共有できたために集団として見た場合、ネアンデルタール人よりも生物学的に強くなれたと考えられています。
そのようななかで、ネアンデルタール人の研究を続けてきた東京大学総合研究博物の館長の西秋良宏教授(先史考古学を専門)も、そうした意見を持つ一人でした。
「私自身、以前は、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより劣っていたと考えていました。しかしながら、今はそれほど両者に差がないと思っています」と振り返りました。
すると、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の運命を分けた差は何でしょうか?
やはりホモ・サピエンスには、ネアンデルタール人にない「発明の才」があった、という説は根強いです。
この説を裏付ける発見として、「東北大学 東北アジア研究センター」の佐野勝宏教授(先史考古学を専門)らは、イタリア南部のホモ・サピエンスの遺跡で見つかった約4万5000年前~4万年前の石器に、弓、投槍(なげやり)、投槍器(とうそうき)という道具によって、高速で投射された痕跡があることを発見しました。
これにより、効率よく安全に獲物を仕留められたホモ・サピエンスが、ネアンデルタール人との生存競争で優位に立ったと推測しています。
しかしながら、投射痕(とうしゃこん)のある石器が見つかったのは、この遺跡だけです。将来、ネアンデルタール人の遺跡から、同様の石器が出てこないとも限らないと言えます。
このような中で、ネアンデルタール人が作った石器や洞窟の壁画、装飾品などの考古学的な証拠が増えました。これらの考察から、ホモ・サピエンスに近い能力を持っていたと推測する研究者が多いことも事実です。
(3)偶然説:ネアンデルタール人滅亡なぜ?ホモサピエンスが生き残った理由は?
2010年代に関心を集めた学説は、ホモ・サピエンスが犬を飼い始めて狩猟の成功率を高め、ネアンデルタール人より優位に立ったという説です。
但し、現代の犬が登場したのは約1万5000年前と推定されています。ネアンデルタール人が絶滅した約4万年前に、犬の祖先であるオオカミが家畜化されていた証拠はありません。
東京大学の近藤修准教授(形態人類学を専門)は、2021年3月に出版された大学生向けの自然人類学の教科書「人間の本質にせまる科学」の中で、ネアンデルタール人の絶滅を考察する11もの仮説を比較し、検討しています。
どの仮説も単独では真実の学説とみなすには弱いと考える近藤修准教授は、「ネアンデルタール人の絶滅の理由は分からない」と嘆き、担当した章の最後で「ホモ・サピエンスが生き残ったのは偶然の結果にすぎない」という英国人研究者の見解を紹介しています。
(4)『共存後、知識を蓄積できた』説:ネアンデルタール人滅亡なぜ?ホモサピエンスが生き残った理由は?
英国ロンドンの自然史博物館のクリス・ストリンガー教授は、ネアンデルタール人と共存後、現生人類(ホモ・サピエンス)のほうが組織化グループ(社会グループ)の規模が大きく、知識を上手に蓄積でき、その知識を基にして生き延びることができたと力説します。
詳細には、ネアンデルタール人がヨーロッパに現れたのは約40万年前のことです。現在の説では、約4万年前に絶滅したとされます。現生人類がアフリカからヨーロッパに到来して間もなくのこととみられています。
だが「現生人類(ホモ・サピエンス)が約5万4000年前に西ヨーロッパにいたことが有力になったとする」『発見』は、現生人類がヨーロッパにやって来たのは約4万年前よりずっと前で、ネアンデルタール人が絶滅するまで1万年以上にわたって、2つの人類が同地で共存していたかもしれないことを示唆しています。
クリス・ストリンガー教授は、現生人類が素早くネアンデルタール人を圧倒したとする他の説に対し、見直しを迫る『発見』だと言います。
「現生人類(ホモ・サピエンス)が一夜にして乗っ取ったわけではなかった」とクリス・ストリンガー教授はBBCニュースに語りました。「ある時はネアンデルタール人が優位になり、またある時は現生人類(ホモ・サピエンス)が優位に立ったりもした。もっと微妙なバランス関係があった」と力説しています。
では、現生人類(ホモ・サピエンス)がネアンデルタール人を素早く絶滅させたのでなければ、現生人類を最終的に優位な立場にしたのは何だったのでしょうか。
専門家からは多くの説が出ています。芸術、言葉、そしてもしかすると、より優れた脳を生み出す能力だったなどとする説です。ですが、クリス・ストリンガー教授は、現生人類のほうが組織化されていたためだと考えています。
「現生人類のほうがネットワークづくりがうまく、組織化グループ(社会グループ)の規模が大きく、知識を上手に蓄積でき、その知識を基にして生き延びることができた」と力説しています。
(5)素人の意見「疫病説」:ネアンデルタール人の滅亡なぜ?ホモ・サピエンスが生き残った理由は?
ネアンデルタール人は、なぜ絶滅したのか?の仮説の一つに、アフリカから世界に広がったホモ・サピエンスとの交雑で、ネアンデルタール人の間でアフリカ由来の深刻な感染症(疫病)が広がり、人口を減らしたという「疫病説」があります。
私の素人の意見では「疫病説」が正しいのではと考えます。
理由としては、先ず、上述したクリス・ストリンガー教授によって、「ホモ・サピエンスが約5万4000年前に西ヨーロッパにいたことが有力になったとする」『発見』は、ホモ・サピエンスがヨーロッパにやって来たのは約4万年前よりずっと前で、ネアンデルタール人が絶滅するまで1万年以上にわたって、2つの人類が同地で共存していたかもしれないことを力説しています。
このクリス・ストリンガー教授が発見したネアンデルタール人とホモ・サピエンスとが共存していた期間に、上述のスバンテ・ペーボ博士が突き止めたように、ネアンデルタール人は、アフリカから世界に広がったホモ・サピエンスと交雑していたと推測されます。
これによって、ネアンデルタール人は、アフリカ由来の深刻な感染症(疫病)を重症化させる遺伝子をホモ・サピエンスから受け継いだ可能性があります。他方で、ホモ・サピエンスは、アフリカ由来の深刻な感染症(疫病)を防ぐ遺伝子を受け継ぐことができた可能性が高いと思います。
従いまして、ネアンデルタール人はアフリカ由来の深刻な感染症(疫病)を重症化させ人口を減少させていき、ついには、約4万年前にネアンデルタール人が絶滅し、アフリカ由来の深刻な感染症(疫病)を防ぐ遺伝子を受け継いでいったホモ・サピエンスが生き残ったのではないかと考えます。
ネアンデルタール人の滅亡なぜ?ホモ・サピエンスが生き残った分かりやすい理由は?のまとめ
(1)疫病説:ネアンデルタール人の滅亡なぜ?ホモ・サピエンスが生き残った理由は?
ネアンデルタール人は、なぜ絶滅したのかの仮説の一つに、アフリカから世界に広がったホモ・サピエンスとの交雑で、ネアンデルタール人の間でアフリカ由来の深刻な感染症(疫病)が広がり、人口を減らしたという「疫病説」があります。
(2)「能力の差」説:ネアンデルタール人の滅亡なぜ?ホモ・サピエンスが生き残った理由は?
ホモ・サピエンスは知能では、ネアンデルタール人とほぼ同じだったが体力がなかったため逆に大きな集団を作る習性を得ました。
その結果、文化や技術を広い範囲に広めることでネアンデルタール人より発達して高い順応性を得ることができました。
しかしながら、ネアンデルタール人が作った石器や洞窟の壁画、装飾品などの考古学的な証拠が増えました。
これらの考察から、ホモ・サピエンスに近い能力を持っていたと推測する研究者が多いことも事実です。
(3)偶然説:ネアンデルタール人の滅亡なぜ?ホモ・サピエンスが生き残った理由は?
東京大学の近藤修准教授(形態人類学を専門)は、自然人類学の教科書「人間の本質にせまる科学」の中で、担当した章の最後で「ホモ・サピエンスが生き残ったのは偶然の結果にすぎない」という英国人研究者の見解を紹介しています。
(4)『共存後、知識を蓄積できた』説:ネアンデルタール人の滅亡なぜ?ホモ・サピエンスが生き残った理由は?
クリス・ストリンガー教授は、「ホモ・サピエンスが約5万4000年前に西ヨーロッパにいたことが有力になったとする」『発見』は、ホモ・サピエンスがヨーロッパにやって来たのは約4万年前よりずっと前で、ネアンデルタール人が絶滅するまで1万年以上にわたって、2つの人類が同地で共存していたかもしれないことを力説しています。
そして、現生人類はネアンデルタール人と共存後、現生人類のほうが組織化グループ(社会グループ)の規模が大きく、知識を上手に蓄積でき、その知識を基にして生き延びることができたと力説しています。
(5)素人の意見「疫病説」:ネアンデルタール人の滅亡なぜ?ホモ・サピエンスが生き残った理由は?
私の素人の意見では「疫病説」が正しいのではと考えます。
上述したクリス・ストリンガー教授が発見したネアンデルタール人とホモ・サピエンスとが共存していた1万年以上の期間に、上述のスバンテ・ペーボ博士が突き止めたように、ネアンデルタール人は、アフリカから世界に広がったホモ・サピエンスと交雑していたと推測されます。
これによって、ネアンデルタール人は、アフリカ由来の深刻な感染症(疫病)を重症化させる遺伝子をホモ・サピエンスから受け継いだ可能性があります。他方で、ホモ・サピエンスは、アフリカ由来の深刻な感染症(疫病)を防ぐ遺伝子を受け継ぐことができた可能性が高いと思います。
従いまして、ネアンデルタール人はアフリカ由来の深刻な感染症(疫病)を重症化させ人口を減少させていき、ついには、約4万年前にネアンデルタール人が絶滅し、アフリカ由来の深刻な感染症を防ぐ遺伝子を受け継いでいったホモ・サピエンスが生き残ったのではないかと考えます。
最後まで、読み進めて頂きまして、有難うございました。皆さんはどう考えますか?